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高リン血症治療の進歩~鉄代謝とリン代謝の接点~

慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)はカルシウム・リンなどの検査値異常と骨代謝異常、血管石灰化が複雑に関連した病態であるが、近年、リンの負荷に反応し骨細胞から分泌されるペプチドホルモンであるFGF23が、リンとは独立した生命予後不良因子として注目されてきている。

こうした中、FGF23はリン負荷だけではなくカルシウム負荷や鉄欠乏においても産生が亢進することが明らかになりつつあり、高リン血症治療剤の選択肢が増えた今日、金属含有リン吸着薬がFGF23代謝に与える影響について研究が進められている。

本講演では、昭和大学横浜市北部病院の緒方浩顕先生をお迎えし、高リン血症管理に関する最新の知見について、FGF23への影響や鉄代謝とリン代謝の接点という観点からお話しいただいた。

カルシウム非含有リン吸着薬によるカルシウム負荷軽減の意義

リン負荷は、血管の石灰化や酸化ストレス、炎症と関連しており、動脈硬化を惹起し、心血管リスクを高める。腎機能が低下しリン排泄が減少した患者では、リン吸着薬により過剰なリンを体外に排出させるが、カルシウム含有と非含有のリン吸着薬を比較した研究18件を含むメタ解析で、カルシウム非含有リン吸着薬の使用は、総死亡を相対的に22%低下させ、冠動脈石灰化の進展も遅らせたことが報告されている1)。また、わが国の前向き観察研究において、血清カルシウム値が9.5より高値になると生命予後が悪化したといった報告2)もある。

リン負荷を加えると、リン利尿ホルモンであるFGF(fibroblast growth factor:線維芽細胞増殖因子)23の骨細胞からの分泌が亢進するが、腎機能の低下が進行すると、この代償機構は機能しなくなる。それだけでなく、FGF23高値がリンとは独立して左室肥大3,4)や心血管イベント、心血管死、総死亡などさまざまなアウトカム4)と関連していることがわかってきた3)。さらに、動物実験では、心筋へのFGF23注入が左室肥大を惹起することや5)、FGF23 投与により遠位尿細管におけるナトリウム再吸収が亢進し、高血圧や左室肥大を来すこと6)が示されている。これらの知見は、FGF23が心血管イベントの単なるマーカーではなくリスク因子の1つでもある可能性を示唆しており、保存期CKD患者においてもリンを積極的に管理してFGF23を下げることが、心血管マネジメントに有益であると考えられる。

さらに、FGF23の亢進には、リン負荷だけでなくカルシウムが関与していることが最近の研究で示唆されている。低カルシウム状態のマウスにリン負荷をかけてもFGF23は上昇しないが、カルシウムが正常値であるマウスでは、リン負荷に応じてFGF23は上昇した7)。同知見は、カルシウム負荷がなければリン負荷を上げてもFGF23が分泌されないことを示している。実際、カルシウム含有リン吸着薬で高リン血症に介入しても、FGF23は低下しないことが臨床試験で確認されていることから8~10)、カルシウム含有リン吸着薬のみのリン管理は不十分であると考えられる。

図1 カルシウム負荷を回避できるカルシウム非含有リン吸着薬の重要性これらの知見を総合すると、FGF23はリン負荷状態で上昇し、心血管イベントの増加、総死亡リスクの上昇に関連しているといえる。また、FGF23の上昇には、カルシウム負荷やPTH(parathyroid hormone:副甲状腺ホルモン)亢進、ビタミンD投与、さらには後述するように鉄欠乏も関与しており、リン管理においては、カルシウム負荷を回避できるリン吸着薬を選択し、FGF23も含めて管理することが重要である(図1)。

リオナは保存期慢性腎臓病患者においてFGF23を低下させた

リン吸着薬のなかでFGF23に影響を与える薬剤はこれまでにも報告があったが8~10)、新しいカルシウム非含有リン吸着薬であるクエン酸第二鉄(製品名:リオナ® 錠250mg、以下リオナ)もFGF23 を低下させることが臨床試験で示されている。米国のステージ3~ 5CKD患者に12週間リオナを投与したプラセボ対照試験11)では、FGF23が試験前と比べ約40%低下し、わが国のプラセボ対照試験12)でも、12週間の投与で保存期CKD患者においてFGF23が試験前と比べ約50%低下した。

一方、日本人透析患者においてリオナとセベラマー塩酸塩を比較した前向き介入試験では、12週間の投与で、リン、カルシウム、PTHの低下に関し、リオナはセベラマー塩酸塩に対して非劣性であることが確認された13)

また、透析患者には重度の便秘合併が多いが、セベラマー塩酸塩では主な副作用として便秘と腹部膨満感、腹部不快感がみられたのに対し、リオナでは下痢が多かった13)。リン管理におけるカルシウム負荷の問題やFGF23の重要性が指摘されるなか、新たにリオナが上市されたことは朗報である。