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透析患者の薬物適正使用

血液透析(以下、透析)患者では、食物繊維不足や水分制限などにより、高率に便秘を来すことが知られている。一般に、高齢になればなるほど便秘発症率は高くなるが、透析患者ではさらにその傾向が強くなる。また、便秘は生命に関わる疾患でないため、「たかが便秘」と考えがちであるが、透析患者では致死性の腸管壊死や穿孔につながる可能性があり、軽視できない症状といえる。そのため、多くの透析患者では下剤を使用しているが、下剤の選択を誤ると常習便秘に陥ることもあり、適切に使用することが大切である。

本セミナーでは、腎臓病薬物療法の第一人者である熊本大学薬学部附属育薬フロンティアセンター長・熊本大学薬学部臨床薬理学分野教授の平田純生先生に透析患者における便秘の病態や腸管穿孔への対策、下剤の選び方などについて解説いただいた。

透析患者への薬物投与には注意が必要

慢性腎臓病(CKD)患者は腎機能が低下することから、腎排泄型の薬剤を投与すると、血中薬物濃度が上昇して副作用が発現しやすい。CKDステージ別に有害事象の発症率をみると、腎機能が低下しているほど有害事象が多く1)、腎排泄型薬剤を使用する場合は、腎機能に応じて投与量を調節する必要がある。また、高齢かつ低体重症例においても有害事象が多く1)、日本の添付文書の記載が欧米と同じ薬剤の場合、欧米人に比べ体格が小さいことをふまえ、添付文書の表示よりも減量するなどの投与設計をすることが求められる。

CKD患者では肝代謝型の薬剤についても注意が必要である。肝臓の代謝により水溶性になった代謝物に活性がある場合、腎機能が低下した状態では尿中に排出されず、血中濃度が上昇する。たとえば、糖尿病治療薬のスルホニル尿素薬(SU薬)の中には、糖尿病性腎症患者の場合において活性代謝物の蓄積により、低血糖を遷延化させる可能性のあるものがある2)

米国では年間10万人の高齢者が薬剤有害反応のため入院しており、緊急入院の原因の2/3が糖尿病治療薬あるいは抗血栓薬である3)。また、ワルファリンによる大出血発症率と腎機能の関係をみると、末期腎不全患者では腎機能正常者に比べて10倍も出血率が高いといった報告もある4)

このように、CKD患者とりわけ透析患者では薬物による有害事象が起きやすく、注意が必要である。

透析患者の約半数が便秘を合併

図1 全透析患者における便秘の割合

透析患者において、注意すべき症状の1つとして便秘がある。便秘の国際的定義であるRomeⅡによると、「4回に1回以上、排便でいきむことがある」、「4回に1回以上、排便で硬結便または兎糞状の便を認める」、「4回に1回以上、残便感がある」、「4回に1回以上、肛門・直腸に閉塞感がある」、「4回に1回以上、摘便が必要」、「排便が週に3回未満」(ただし下痢はなく、過敏性腸症候群は除外する)、この6項目のうち2項目以上、1年間で最低12週間にわたり症状が認められる場合を機能性便秘と定義している(ただし、連続的でなくても可)5)

図2 便秘に影響する因子(多重ロジスティック回帰分析)

本定義に基づいて、透析患者235例を対象にアンケートを実施した結果、患者の19%が機能性便秘であり、下剤服用者は33%、透析患者の52%が便秘を合併していることが判明した(図1)6)。また、便秘を有する患者の割合は、50歳未満では18%であるのに対し、80歳を超えると88%と高率であった。一般人口においても加齢とともに便秘の割合は上昇するが、透析患者ではこの傾向がより顕著といえる。

さらに、便秘発症に関する要因について多重ロジスティック回帰分析を行った結果、最も関連が強い因子は年齢であり、そのほかに糖尿病や女性であることが有意な発症因子として挙げられた(図2)6)

※:2006年に「RomeⅡ」は「RomeⅢ」に改訂されたが、便秘の診断基準は変更されていない。