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慢性腎臓病における高カリウム血症
対策の重要性

体液分布を規定する浸透圧と膠質浸透圧

図1 細胞内と細胞外の体液分布

成人の体内水分量は体重の約60%を占め、細胞内に40%、細胞外に20%分布している(図1)。細胞内・外は細胞膜によって仕切られ、体液分布は浸透圧によって規定される。細胞膜は、水を自由に通過させるが、電解質を通さない半透膜になっているため、ナトリウムイオン(Na)やカリウムイオン(K)などの電解質濃度が高いほうに水は移動する。

一方、細胞外液は毛細血管壁によって仕切られ、15%が間質液として組織間腔に、残りの5%が血漿水分として血管内に分布している。その分布を規定するのは膠質浸透圧で、水、電解質は毛細血管壁を通過するが、蛋白質(アルブミン)は通さないため、膠質浸透圧が上昇すると水やNaが一緒に血管内に移動する。循環血漿量を急速に増加させる必要があるときに、生理食塩液よりアルブミン製剤や新鮮凍結血漿(FFP)が有効なのは、こうした原理に基づいている。

細胞内液と細胞外液で異なる電解質組成

体液中に含まれる電解質は、細胞内液と細胞外液でその組成が異なる(図2)。細胞外液にはNa、塩素イオン(Cl)、重炭酸イオン(HCO3)が多く含まれており、海水と非常に近い組成をしている。一方、細胞内液にはK、リン酸イオンなどが多く含まれる。それぞれ組成は異なるものの、陽イオンの総和と陰イオンの総和は等しく、一定の均衡を保っている。

図2に示すように電解質にはそれぞれ役割があり、どこかでバランスが崩れると、ほかの電解質もさまざまな影響を受けることになる。例えば、腎機能障害などの原因で体内をアルカリ性にするHCO3が細胞外液から減少すると代謝性アシドーシスを招き、アシドーシスが生じると、その代償に体内を酸性にする水素イオン(H)と交換にKが細胞内液から細胞外液へ移動する。CKDの進行に伴って発症する高K血症は、腎機能障害による尿中へのK排泄の低下に加え、代謝性アシドーシスに伴うKの細胞外への移動も機序として考えられる。

図2 細胞外液と細胞内液での電解質バランスと作用

血清K値に影響する体内総K量と細胞内外のK分布異常

図3 体内カリウムの分布 / 図4 細胞内外カリウム分布に変化を生じる機序 / 図5 腎臓におけるアルドステロンの作用

Kの体内総量は約3,000mEqで、全体の98%が細胞内で、そのほとんどが筋肉細胞にある(図3)。残りの2%は細胞外液に分布している。一日に25~60mEqのKが食事から摂取され、20~50mEqが尿から、5~10mEqが便から排出される。こうしたバランスのなか、細胞内のK濃度は100mEq/L に、細胞外、すなわち血清K濃度は3.5~5.0mEq/Lに保たれている。

細胞内外のKの分布に変化を及ぼす因子として、(1)酸塩基平衡、(2)インスリン、(3)交感神経β作用(カテコールアミン投与)、(4)溶血・組織崩壊などがある。

酸塩基平衡が崩れてアシドーシスが生じると、その代償に、Hと交換にKが細胞外へ移動し、 血清K値が上昇する(図4)。一方、インスリンやカテコールアミンは、細胞外から細胞内にKを移動させるため、血清K値は低下する。高K血症に対して行われるグルコース・インスリン(GI)療法は、こうした機序を利用したものである。ただし、これらの血清K値の変化はあくまでも細胞内外の移動によるものであり、体内からKが排出されて減少したのではない。

挫滅症候群や消化管出血などで高K血症を呈することがあるが、筋肉や赤血球などが壊れた場合も、細胞内からKが大量に血液中に放出されるため、血清K値は上昇する。

また、腎臓におけるアルドステロンの作用も血清K値に影響を与える(図5)。アルドステロンは集合管でNaと交換にKを尿中へ排出し、血清K値を低下させようと働くが、CKDの治療でよく使われるアンジオテンシンII(ARB)、ACE阻害薬、アルドステロン拮抗薬など、レニン・アンジオテンシン(RA)系抑制薬はいずれもアルドステロンの作用を抑える。これらのRA系抑制薬の働きによって、Kは排出されにくくなり、血液中にとどまり、高K血症の発症につながる。

このように高K血症には、(1)腎不全などによってKが排出されず、細胞内、細胞外でKが増加して生じる、体内総K量の異常、(2)Kの総量に変化はないが、アシドーシスなどによって生じる、細胞内外のK分布異常、の2タイプの病態が考えられる。しかし、実際は腎不全にアシドーシスが合併していることが多く、双方の治療が必要になる。